「お前らばっかじゃね~の!」
ふてくされた顔をして、机に足を乗せる山田悟。
はは~ん。
もしかして、山田悟って、自分がこのクラスで一番かっこいいとか思ってるタイプ?
だから、自分以上にかっこいい留学生が来ることに機嫌が悪い?
「・・・ちっちゃ!!」
私は小さくそう言って、自分の席に鞄を置いた。
「佐藤、何か言ったか?」
机に踏ん反り返って座った山田悟が、顔だけ私の方に向けた。
うぅ・・・
その朝練の後のちょっと濡れた髪に、弱いんだよね。
朝から汗いっぱいかいて、サッカーしてる姿はやっぱりかっこいい。
「汗かき王子・・・」
ボソっと呟いた私の声を聞き逃さなかった山田が、飲んでいた炭酸飲料を吹き出しそうになった。
「ばっかじゃね~の!!頼むから、二度と言うな!」
怒りながらもまんざらでもない表情で、顔を赤くした汗かき王子。
早速私は、亜沙子に報告。
私の心の中には2人の王子。
『灰皿王子』と『汗かき王子』
恋を知らない私は、そんな『恋愛ごっこ』を楽しんでいた。