王子は体をそらしながら、眼鏡の真ん中を押さえて、私達をじっと見た。




「あぁ、あの時のガキか… ピンクの筆箱!!」



覚えててくれたんだぁ…



灰皿王子に吸い込まれて、消えてしまいそうだった。



こんな夢のような時間が私に訪れるなんて…


信じられない。




「山田君のお姉ちゃんが、俺と同じ課で働いてんだよ。」



最初に『なんじゃい、おめ~ら』って言った時の声とは全然違う。


優しくて、温かい声。



すごく低いけど、怖くない声。



「喫煙女!?」


私は夢の中にいるような気分で、思ったことをそのまま口に出していた。