近くで見るまで知らなかった。
真っ黒だと思っていた髪は少し痛んで茶色かった。
結構気に入っていたブルーのシャツは、実はチェックの模様が入っていた。
そして、
声…
初めて聞いた声。
何度も想像した声。
「ごめん」と「悪いな」しか言わなかったけど、
私の胸をドキドキさせる魅惑の声。
低くて、ちょっとこもったような声。
優しい声。
呆然と立ちすくむ私の手を引っ張る亜沙子は、私以上に興奮していた。
「追いかけるしかないよ!チャンスは自分で掴まなきゃ!」
引っ張られるままに、道路を渡り、走っていた。
顔が熱い。
ぶつかった肩に
灰皿王子の感触が残ってる。
やっぱり好きなんだ、私。