もう30分が過ぎていた。
私は・・・どうしようもなくて、山田に電話をしてしまった。
もちろん家の電話を使って、携帯は胸に抱いたまま。
「もしもし・・・もう寝てた?」
夜中の電話にも関わらず、テンションの高い山田。
『どうした?フラれたか?俺に惚れちゃったなら、今からでもまだ間に合うけどなぁ』
今は、このノー天気な会話が嬉しかった。
『姉ちゃんに用があんだろ?かわるから待ってて』
何も言わなくてもわかってくれた山田は、少しずつ株が上がっていく。
胸に抱いた携帯は、まだ静かなまま。
鳴りそうな気配もない。
「もしもし・・・遅くにすみません」
山田のお姉様もまた山田同様テンションが高かった。
この兄弟は、夜中になるとどんどん陽気になるようだ。
『いいよ!どうしたの?清水君、また何かしでかしたの?』
私は、さっき王子と話した内容を伝えた。
そして、王子を好きな女の子と会うという王子を許した自分を責めた。
『イイ子でいようなんて思わなくていいのに。でも、嫌だって言っても、いつかはあの2人も向き合わなきゃならないんだよね。ちょうど良かったんじゃない?』
「そうですか・・・ね」
『わざわざ陽菜ちゃんにお伺い立ててから、会いに行くなんてさ、清水君が陽菜ちゃんを大事に思ってる証拠じゃない?何もないよ。清水君は優しいから、きっと本気になって相談に乗ってあげてて、遅くなってるんだと思うよ』
私は鳴らない携帯を見つめながら、お姉様の声に癒された。