亜沙子と優雅の会話を聞いて、少しずつ理解できた。
ふざけて2人の秘密を調査していたことを申し訳なく思ってしまった。
2人とも、結構苦労してるんだ…
「じゃあ、血の繋がらない兄弟ってこと?」
「ああ。でも、今は違う。俺の中ではずっと弟だけど、あいつは俺を嫌ってるから。」
小学校の頃に、優雅のお父さんが再婚した。
お父さんに引き取られた優雅は、新しいお母さんと暮らすことになった。
新しいお母さんはバツイチで、子供が2人いた。
その子供の1人が、あの生意気な山田悟だった。
優雅は、1人っ子だったから弟ができてすごく喜んだそうだ。
しばらくは仲良かったが、大きな喧嘩をして以来仲が悪くなり、その後、親が離婚した。
そして、悟が中学に入った頃に2人は再び他人となった。
「複雑だね…優雅も苦労してるんだ。」
私は、今まで優雅に対して抱いていた勝手な固定観念を消そうと思った。
イタリアに留学して、帰国したら学校中のアイドルだった。
そんな優雅を苦労知らずのお坊ちゃんだと思っていた。
だから、優雅の言葉はどれも嘘っぽくて、
何を言われても、誰にでも言っている言葉のように感じていた。