戻れるものなら戻りたい。
昨日に・・・
1分前に・・・
あんなものを見る前に。
学校を出たのはいつもより遅かった。
もう来なくていいと言われたテニス部に正式に退部届を提出しに行った。
私も亜沙子も不本意だったけど、テニス部で親友に出逢えたことだけでもテニス部に入部した意味があったんだと思える。
「じゃ、小早川によろしく」
「また明日ね~」
国語準備室へ向かう亜沙子の背中を見つめながら、私はニンマリしていた。
校門を出て、市役所を横目に見ながら、王子を想う。
どうして、見てしまったんだろう。
駐車場の片隅に、男性が立っていた。
うつむいた小柄な女性がその男性に何かを話しながら、涙を流していた。
こんな場所で別れ話かぁ、なんて思いながらその2人を見ながら、通り過ぎようとした。
「まだわかんねーだろ」
怒鳴り声のような声。
その声は・・・
私の最愛の彼氏、清水晴斗の声だった。