「ちょっと!山田!優雅は顔だけが命なんだから、顔の近くは殴らないで!」
私は、大げさに痛そうな顔をする優雅の前に手を伸ばした。
「ばっかじゃね~?お前と優雅は良いコンビだな。俺を巻き込むのはやめてくれ。」
置いた鞄をまた持って、山田はため息をついた。
彼女とうまく行っていない原因だって、きっとその冷たい態度のせいだよ…
かわいそうな彼女。
「おい、佐藤!いちいち俺たちのこと、詮索すんのやめてくれるかな。いらつくんだよ!」
山田は振り向きながらそう言って、山田なりの恐い表情を作って私を見た。
山田って、結構かわいい顔してるから怒った顔しても全然恐くない。
むしろ、かわいく見えちゃう。
「相変わらず悟は生意気だね~!陽菜ちゃん、気にすることね~よ。悟ってああ見えて…」
優雅が言いかけた言葉の続きは、山田の机を蹴る音でかき消された。
サッカー部の山田に蹴られた机は、どれだけ痛かっただろう…
教室を出る山田の背中を見つめながら、優雅が神妙な顔つきで言った。
「あいつさ、昔はかわいかったんだけどな。」