「好き」

「好き」

いつの頃だったか思い出せないが、僕の夢に現れるようになったある女の子。


僕の心に無言の告白が届く。

彼女は僕の高校の生徒である。



顔を合わせただけで、僕は告白されているような気持ちになった。

彼女の瞳からは、僕への愛情が零れ落ちそうだった。


僕は自分が怖くなった。


自分を見失うな。

僕は地味な古典教師、小早川だ。


1人の生徒に想われたくらいで、その気になってどうする。


高校生が大人の男性に憧れるなんて、よくある話じゃないか。


僕がその気になった頃には、彼女はもう僕に興味がない。


そうに決まってる。


だから、信じるな。


その気になっちゃだめだ。