だから傷つけられても、裏切られても、僕はすぐに立ち直る。


「僕の人生こんなもんだ」と自分に言い聞かせ、悪い女に引っかかった自分を笑った。


教師になってから、悪い女ばかりに引っかかる。


つい最近も、しつこく僕の携帯に電話をしてくる女性がいる。

同僚の音楽教師、新井佐知子。

軽い女だと知っていて、僕は彼女の世界に足を踏み入れた。




半分はわかってた。



彼女の『あなたしか頼れない』って言葉が嘘だってこと。


少し刺激が欲しかったのかも知れない。


短い夢の後、僕はとてもむなしい気持ちになった。

やっぱり僕には恋愛は向いていない。

こんなもんだ、僕の人生。


古典の教師として、地味に一生を終えるのがふさわしい。


密かに憧れている源氏物語のような恋には、きっと一生縁がない。

自分にはできない恋愛だからこそ、憧れた。