~小早川目線~



僕は教師10年目の『超』が付く程、真面目な男。



古典という地味な教科の担当である僕は、高校の中でも目立たない存在だ。


そんな僕に・・・

こんな面白みのない僕に・・・


転機が訪れた。



天使が舞い降りてきた。



敷かれたレールの上を静かに進んでいくのが僕だった。

時間通りにきっちりと。


そんな僕の人生にブレーキをかけた人がいた。


まっすぐな僕のレールの上で、両手を広げて僕に向かって叫ぶ。



「小早川先生、好きです!!」


どこがいいんだろう。

僕が女性だったら、絶対に僕みたいな男を選ばない。


理屈っぽくて、融通の利かない、気難しい男。


もうすぐ35歳になるただのおじさんだ。



本気の恋愛とか、結婚とか、もうとっくに諦めていた。

自分には関係のないものだと思っていた。


特に寂しさも不自由さも感じない日々の中で、漠然と自分は一生独身だろうと思っていた。