「次の方~!」



ガーーーーン




私達は、船の形のシンプルなボートに乗った。




「陽菜、がっかりしてんの?そんなにキスしたかったの?」




王子はスイスイとボートをこぎながら、湖の奥に進んでいく。


私は、遠くに浮かぶ白鳥のボートを見つめながらため息をついた。



「ふん・・・白鳥に乗りたかっただけだもん。」




私はがっかりしている理由が、『キスできない』ことだって自分でわかっていた。



いつかできるかも知れないけど、いつまで伸ばされるんだろう。



でも、キスしてないからまだその先にもいかないし、安心してデートできるってのもある。



キスしちゃったら、友達はみんなそこからトントンと進んでいってるから。




まだ子供な私と亜沙子は、そんなクラスの友達の話を聞きながら、興奮してたっけ。




「今度はWデートでもすっか?」



王子の言うWデートのもう一組って誰?



「亜沙子ちゃんとあのオヤジっぽい先生と・・・くくく!」



王子は笑い出す。




「男だから話聞いてると、わかるよ。あの先生は亜沙子ちゃんのこと好きだと思う。」



「マジで!!!だよね~!私と優雅も絶対そうだって思ってたんだよね!」




私の口から『優雅』の名前が出たことに王子はちょっとむくれた。



そんなかわいい王子とのデートは、たまらなく楽しかった。