数分後、私の目の前に姿を見せた女の子は、顔を見るとどこかで見たことがある気がした。



2年間も同じ校舎の中にいれば、何度かは会っているだろう。



「おはようございます!」




元気良く挨拶をしたその生徒は、「佐藤陽菜」という名前だった。




「優雅、もう帰っていいわよ!」



私は言ってから、『優雅』と呼び捨てにしてしまったことを悔やんだ。


佐藤陽菜は、私を少し疑うような目で見た。



「佐藤さん、晴斗のどこが好きなの?」



私の質問に、佐藤さんは、びっくりした顔をした。



私の顔が怖かったからかも知れない。


きっと、思っていた状況とは違っていたから。





悪魔の館へでも迷いこんでしまった少女のように・・・怯えた目をしていた。



助けてくれるはずの優雅ももういない。




「あなた、晴斗の何を知ってるの?」




言うつもりのなかったことまでもが口から出てくる。



目の前に、晴斗を奪った女がいると思うと、憎らしさが込み上げる。




私にはないものをいっぱいもった佐藤陽菜。


純粋そうな瞳。



人を疑うことを知らない彼女は、まだ私を信じているようにも見えた。