次の日の朝、登校する優雅を見つけ、音楽室へ呼び出した。
優雅は、優しい子だから、私が頼むと断ることができない。
「何ですか、先生。」
「あの子・・・ここへ連れてきてくれる?」
私がそう言うと、優雅はあからさまに嫌な顔をした。
「何言ってるんですか?あの子って誰のこと?何がしたいんですか!」
怒った顔をしていても、口調は優しかった。
「晴斗の彼女なんでしょ?晴斗から、よろしく頼むと言われてるの。だから、一度話して見たかっただけ。だめかしら?」
こんな自分が嫌い。
その場限りの嘘を平気でつけちゃう自分が恐ろしかった。
その相手が、一度は愛した人であることと、純粋な人であることに胸が痛んだ。
「そうだったんですか。良かった・・・新井先生、大人になりましたね!」
笑顔を向けた優雅は、そう言って、教室に向かった。