「小早川先生、そこ私の席です!!」
「僕が何回名前を呼んだと思う?僕の声が聞こえないくらい、誰かさんに夢中なんだな・・・まあ、若いんだからいいだろう。その代わり、僕の代わりに授業やってくれ。」
小早川ったらこんなことを言って、クラスのみんなの笑いを取った。
私は、嬉しかった。
小早川が座っている席を嬉しそうに見ている亜沙子が・・・
亜沙子は、よく言っていたんだ。
『先生と一緒に授業受けたい』って。
だからね、私は親友の為に小早川の冗談を本気にしてみることにした。
「じゃあ、今から私が授業をします!!」
私がそう言って、ドキドキしながら黒板へと歩き出すと、後ろから大きな影が近付いた。
「じゃあ、俺も手伝います!」
困った時のプリンス優雅。
優雅が、にっこりと笑って、みんなに見えないようにウインクをした。
「では、源氏物語のページを開いてください。」
私と優雅はニヤニヤと顔を見合わせた。
2人とも心の中は同じだった。
小早川の前の席の亜沙子は、背中に感じる小早川の気配にドキドキしていることだろう。
「では、小早川君が、光源氏のセリフを読んでください。藤壺のセリフは、え~っと、津田さん。他の解説部分は、山田君、お願いします。」
優雅は、自然な口調で、本当に適当に当てたかのように3人を指名した。