「佐藤!座りなさい!」
小早川の声なんて右の耳から左の耳へと抜けていく。
私の体と心は、愛する王子に支配されていた。
王子は、私がおおきく手を上げると、眼鏡の真ん中をクイっと押さえて、少し微笑んだ。
きっと言ってるね。
…陽菜のば~かってね。
王子は、くるっと背を向けて、仕事に励む。
私は数分間、立っていたのかも知れない。
クラスのみんなの笑い声で私は我に返った。
「きゃ・・・私ったら!!」
恥ずかしくて席につこうと思ったら、なんと私の席には小早川が座っていた。
小早川は真面目な先生で、こんな冗談をする先生じゃなかったはず。
むふふ。
小早川も亜沙子に恋をしたのかな?
恋をすると、人は変わる。