1年の時から、ずっと小早川先生が好きだった。
だから、古典のテストだけはいつもクラスで一番だった。
恋すると強くなれるんだって教えてくれたのは、小早川先生だった。
だから、小早川先生が私のことを、生徒以上に思っていなくても構わない。
一緒にいられる時間が増えるなら、それは幸せなことなんだ。
一緒に源氏物語を読んで、いろんな話をするのが楽しいんだ。
小早川先生は言ってたね。
『光源氏は、女ったらしだよな・・・』
私は言った。
『自分に正直なだけだよ!』って。
小早川先生は、私の頭に本をポンと乗せて、笑った。
『ほほ~、津田もなかなか大人なこと言うじゃないか』
小早川先生は、真面目な先生。
でも、ちょっとダメな先生。
失恋した女の人の代わりに、生徒を抱きしめちゃうような先生。
そして、急に突き放して、冷たくなったり、また優しくしたりする不思議な先生。
先生は不器用。
だから、うまくできない。
わかるよ、先生。
きっと小早川先生は、恋愛も不器用なんだ。