その日の昼休み、私と亜沙子の『王子の秘密ノート』に新たな情報が書き込まれた。
4時間目、亜沙子に声をかけられて、私は市役所を見た。
そこには、灰皿王子がいた。
眼鏡をかけた灰皿王子が、窓の向こうからこちらをじっと見ていた。
亜沙子が興奮気味に言った。
「チャンスだよ!!陽菜!」
そう言って、亜沙子は私の筆箱を持って、灰皿王子に向かって振り始めた。
私の派手なピンクの筆箱は、あの場所からでもきっと目立つ。
王子が…
手を振り返してくれた。
今日は、ブルーのシャツを着ていた。
ネクタイは深い紫色で、水玉のような柄だった。
私は、亜沙子に手を引っ張られた。
「陽菜!!早く!!」
私は、憧れの灰皿王子に向かって手を振った。
灰皿王子は、腕を組んで少し笑った。
そして、胸の前で組んだ手を外し、手を振ってくれた。