私は勢い良く走って、王子の背中に抱きついた。
「王子~!!大好き!!」
王子は、私の腕を振り解こうとして、腕を振り回した。
「わかったから!歩けんから、離れろや!」
そう言いながらも、王子は私の手を握ってくれた。
「どこ行くの?晴斗さん!」
「内緒じゃ!車で連れまわしてやる・・・ふふふふ」
王子が向かったのは、市役所の駐車場だった。
王子の車は、黒いスポーツカーだった。
綺麗に磨かれた車だった。
王子が助手席のドアを開けてくれた。
「お姫様、どうぞ。」
王子の車の中は、香水のようないい匂いがした。
タバコの匂いが全くしなかった。
「陽菜、緊張しとる?もしかして、エッチされるとか思ってる?」
エンジンをかける前に王子は、そんなことを言って、ますます私を緊張させた。
「晴斗さん・・・タバコは?」
「あぁ?ガキの前では禁煙じゃ・・・」
王子は、駐車場から車を出す時に、駐車場のおじさんに軽く手を上げた。
おじさんは、王子に向かって優しく微笑み返す。