「津田も、うまくいくといいな!」



山田の一言から、亜沙子の恋愛に話が移った。



「小早川先生のこと好きだったんだね、亜沙子ちゃんって。」



優雅は鈍感。


いつも近くの席でキャッキャ言ってたのに、気付いていなかったなんて。



「俺、小早川もまんざらじゃね~と思うけどな。」



山田は、言った。



ある日の放課後に、亜沙子と話しているのを小早川に見られたらしい。



その翌日に、廊下で小早川に声をかけられた。




小早川は「山田・・・いや、何でもない!」と言って、寂しそうな顔をして山田の前から去っていったのだと言う。



「俺が佐藤のことを津田と話してたんだ。それを聞いて、小早川先生は、俺が津田に告白してるって勘違いしたんだと思う。」




山田は私のチョコケーキの最後のひとかけらに手を伸ばす。




「こら!!最後の一口は、あ~げない。」



私は最後のチョコケーキを頬張って、また本題に戻る。



「でも、もし勘違いしたなら、小早川ってどんな気持ちだったんだろうね・・・」



私は、優雅の方を見た。



優雅はコーヒーを一口飲んで、眉と眉を寄せて、考え込む。



「う~ん・・・男だったら誰でも、焦ると思うけどな。今まで自分を好きだった女が、他の男に告白されたなんて知ったらさ。俺も最初に清水さんが陽菜ちゃんに告ったと思った時は、焦ったからね。」



やっぱりライバルの出現って、男でも女でも、いろいろ考えるよね。


それによって、知らなかった自分の本心を知ってしまったりもする。



「今頃、後悔してたりして・・・」



私は、今朝の小早川の優しさを思い出し、ニヤついた。




亜沙子は、小早川と久しぶりに何を話しているんだろう。


小早川は、亜沙子が国語準備室に来てくれたことをどう感じているんだろう。




どうか、うまく行きますように・・・