額ににじんだ汗を、シャツの袖で拭う王子。



「3人で仲良く歩いてるのが見えたから、走って下りて来たんじゃ…」



王子は、走って来てくれた。


追いかけてきてくれたんだ。



優雅と山田は、まだうつむいたままだった。



「あのね、この2人は悪くないの。今日は、私が誘ったの。いつも私のこと元気付けてくれて、助けてもらってるからお礼にって。」




私がそう言うと、優雅は驚いたように私を見た。




「いいよ、陽菜ちゃん!王子と一緒にデートしてきなよ。俺達はいいから!」




優雅は、山田の腕を掴んでその場を離れようとした。




「待てや。いつも世話になってるみたいだし、1時間貸し出ししてやる。その代わり、明日からも、陽菜のこと頼むぞ。」




王子…




両手を伸ばして、優雅と山田の頭をがしっと掴む。



そして、髪をわしゃわしゃと乱しながら、笑った。