私も亜沙子も、実らない恋をしている。
でも、不幸なんかじゃない。
好きな人がいるってやっぱり最高に幸せなんだ。
亜沙子は、小早川から借りた源氏物語の本を一日中肌身離さず持ち歩いていた。
小早川、お願いだからこっちを見て。
こんなにもかわいい亜沙子を、放って置かないで。
あんたも気になってるんでしょ?
6時間目の古典の授業中、私は小早川をずっとにらんでいた。
新井先生が好きだとしても、フラれたんでしょ?
しつこく追いかけても、新井先生は、きっと王子を選ぶよ。
王子と新井佐知子は、深い愛で結ばれているんだよ・・・
だから、小早川は新しい恋に踏み出しなさい。
私の心の叫びが届いたのか、小早川は、授業の途中でお腹が痛いと言って、トイレに行った。