私は、晴斗と結婚することしか考えていなかった。
それなのに・・・
どうして、晴斗だけを信じて愛することができなかったのだろう。
世間体を気にする家庭に育った私もいつしか、その考えが染み付いてしまったのか。
晴斗が、役所で働き始めてから、関係がおかしくなった。
世間では、公務員は安定していると言われているが、我が家では、そうではなかった。
私が、高校の音楽の教師として働き始めて、しばらくした頃・・・
「佐知子、ご両親に会いたい。」
今までも何度か晴斗は両親に会いたいと言ったが、予定があるとか適当に誤魔化して伸ばし伸ばしにしていた。
「ごめん、晴斗・・・反対されてるんだ。」
晴斗に告げると、晴斗は、一緒になって説得しようと明るく言ってくれた。
私は、どこかで冷めている自分に気付いた。
そんな時に、元市長の息子とお見合いをした。
それが、崎山信二だった。