音楽大学に通っている時に、友達の紹介で知り合った晴斗。
今までの男とは違って、彼は私を叱ってくれる人だった。
「お前、顔だけだな」
最初に彼に言われた一言は、今でも忘れない。
自分自身で気付いていたことを、彼に言われた。
私は中身のない女。
外見だけ飾り付けて、心は光を失っていた。
気が付くと私は晴斗を好きになっていた。
彼と一緒にいる時だけ、少し自分が好きになれる気がした。
素直になれるのは、晴斗といる時だけだった。
結婚したいと言ってくれた。
私は、両親に報告した。
猛反対を受けた。
その理由は、晴斗のお父さんが亡くなっていたこと。
そして、家柄が釣り合わないということ。
バカバカしいけど、それが私の両親の考えだった。
父親は、政治家だった。
私は、大学時代から何度も、お見合いをさせられた。
1回3万の小遣いをもらう代わりに、政治家の息子達とお見合いを繰り返した。
もちろん、結婚する気はなく、そのお見合いは晴斗も了承済みだった。