「じゃあ、嫌いです。今、嫌いになりました。」
「それって、今キスして欲しいって意味?俺、お前のこといっぱい傷つけて、ひどいことした男だぞ?そんな男とキスしたい?」
王子は、ニヤけたと思ったら、真剣な表情で動揺する私の顔を覗き込んだ。
「だって・・・晴斗さんの記憶の中に残りたいんです。忘れて欲しくないから・・・」
王子は私の肩を抱いて、私の頭に王子の頭をくっつけた。
王子の髪の匂いのせいで、私の嗅覚は敏感になる。
お風呂上がりだったんだ、王子。
「あほかぁ。もう、一生忘れられるわけないんじゃ・・・陽菜のことが、俺の中から消えるなんてありえん。」
マンション脇の空き地で、どこかの中学生が、バッドで素振りをしていた。
シュッシュッって音が、耳に心地良い。
「晴斗さんのバカ・・・」
「ごめん。でも、本当に陽菜が俺を嫌いになりそうで、怖いんじゃ。彼女にできんって言ったり、好きでいて欲しいって言ったり、わけわからんけど・・・」
優しく頭を撫でながら、王子は穏やかに話す。
「俺のこと、好き?」
「はい、大好きです。」