王子の愛する女性に興味が湧くのは当然で・・・
自分にはない新井先生の魅力に気付いては、落ち込んだ。
もう王子を追いかける気はなかった。
王子の幸せは、新井先生と結ばれること。
結婚まで考えている王子。
私ができることは、このまま王子とさよならすることなんだ。
「ねぇ、陽菜。大事なこと忘れてない?」
「へ?」
亜沙子から言われて、初めて気付いた。
「王子は、新井先生との約束を守って、陽菜のことフッたけど、新井先生は・・・そんなに誠実なのかな。」
そういえばそうだ。
小早川が、「さち」と呼んでいるということは、小早川と新井先生の間には、何かがある。
泣いてしまうほど小早川が惚れたってことは、もしかして・・・
「王子に教えてやりなよ!さちこは、浮気してるよ!!だから、王子もそんな約束守らなくていいって!」
一人の私が、『そうだそうだ』と言った。
もう一人の私が『言えないよ』とため息をついた。
王子は、信じてる。
愛してるから信じてる。
私が間に入って、『さちこさんは浮気してる』なんて言える?
きっと私は後悔する。
その結果、王子が私だけを見てくれるようになったとしても、私は胸に痛みを覚えるだろう。