~優雅目線~
今日、俺は陽菜ちゃんに声をかけることができなかった。
陽菜ちゃんはいつも笑顔で、明るくて、俺の太陽のような存在だった。
その陽菜ちゃんが、泣いていた。
古典の授業中、ふと陽菜ちゃんを見た。
頬に伝う涙が、俺の胸に突き刺さる。
席替えをしてから、あまり話すことがなかった。
俺よりも3つ前の右の席の陽菜ちゃんは、俺の席からよく見えた。
俺は時々、消しゴムを投げたりして、陽菜ちゃんを怒らせたりもした。
でも、今日は・・・
何もできなかった。
あの男のことで泣いているってことはわかっていた。
あの市役所で働く清水って男の人。
男の俺から見ても、大人っぽくて、かっこいいと思う。
何でも知っている大人な顔をして、俺達高校生を見下してるのか?
でも、違った。
俺と陽菜ちゃんが仲良く一緒に帰っている姿を見て、清水さんは嫉妬した。
俺達高校生と同じ、ただの男なんだ。