「陽菜、応援するから。王子は・・・陽菜が選んだ人だもん。すれ違っちゃって、お互い意地張ってるんだよ!!」
「会いたい・・・王子と話したい。」
まだ間に合うかな。
もう一度、王子は私に微笑んでくれるかな。
亜沙子が、私の鞄につけたぬいぐるみをツンツンと突っついた。
私も亜沙子のぬいぐるみを引っ張って、言った。
「私も亜沙子の恋、応援してるから。」
「陽菜ぁ!大好き~!」
私と亜沙子は笑顔で空を見上げた。
綺麗な空だった。
梅雨の空は、変化があってとても好きだ。
教室の窓から見たどんよりした雲は、もう消えていた。
「陽菜ちゃん!!駅までお邪魔していいかな?」
遠慮がちに近付いてきたのは、優雅だった。
以前なら、『一緒に帰ろ~』って何事もなく言ってたはずなのに、最近はこんな風に気を使ってくれる。
いいやつだよ、優雅。
こんなにいいやつなのに・・・私の心は王子に囚われたまま。
「いいよ!でも、山田君に怒られるよ~!無断で陽菜と帰った~って!」
亜沙子がそう言うと、優雅は頭をぽりぽりとかいて、笑った。
「そうだな。まさか悟がライバルになるなんてなぁ・・・」
優雅と亜沙子の間に挟まれて、私はもう一度空を見上げた。
「陽菜!!」
誰かに呼ばれた。