その夜、何度も携帯の画面に王子の番号を出して、かけようと思った。
でも、かけられなかった。
何を話せばいいの?
彼女でもない私が、優雅とのことを言い訳するのもおかしいし、
喫煙女とのキスの真相を問い詰めるのも、おかしいよね。
もう何がなんだかわからなくなっていた。
どうしてこんなことになったんだろう。
目を閉じると、浮かんでくる。
王子のあのちょっといじわるな笑顔。
私が見つめると、少し照れたように目をそらす。
王子・・・
今でもこんなに好きだけど、もうどうすればいいのかわからない。
静まり返った夜、耳に残る王子の声。
皮肉っぽい声。
でも、とても優しい話し方。
―――陽菜ぁ
―――ばかかぁおめ~
―――ガキじゃ
忘れることなんてできないよ。
王子。
王子が好き。