「夜のチャリって気持ちいいなぁ、陽菜!」
「はい!風が気持ちいいです!」
本当に風が心地よくて、王子との会話も心地よくて、涙が出るくらいに幸せだった。
「明日も研修頑張ってください!」
「頑張ったらごほうびくれる?何くれるんじゃ?」
私の家の前まで送ってくれた王子がいたずらっ子のような笑顔で言う。
「な、何が欲しいですか・・・」
「お・ま・え・・・かな。くくっく~!!嘘じゃぁ!」
王子は、笑いながら何度も手を振ってくれて、どんどん見えなくなった。
1週間前までは、まだ遠い遠い人だったのに、今はこんなにも近くに感じる。
この体をぎゅっと抱きしめてくれた王子・・・
私を抱きしめて、王子はどう感じたのかな。
まだまだ子供だって思ったのかな。
王子、何度言っても言い足りないくらい「好きです」
この時の私は、幸せの絶頂だった。
これから起こるさまざまな出来事を知るはずもなく、
ただ嬉しくて仕方がなかった。