「小早川先生!早速来ましたよ。亜沙子に源氏について語ってください。」
私は、小早川の前に亜沙子を差し出した。
きょとんとする小早川は、亜沙子の真っ赤な顔を見て何か気付くだろうか。
気付いてくれた方が、話が早いんだけど、鈍感な小早川は何も気付くはずもなく、単純に嬉しそうな顔をした。
「嬉しいね~。源氏物語は日本人にとって、特別なものだからね。若い世代に興味を持ってもらえると嬉しいよ。さ、何から話そうか。」
りんごのように真っ赤になった亜沙子を小早川は隣の椅子に座らせた。
私は、ただ突っ立ったまま2人の様子を見ていたが、途中からそっと部屋を出た。
小早川もまんざらでもなさそうだ。
だって、普通・・・私の分の椅子も用意しない?
2人で来たのに亜沙子だけ座らせたってことは、ちょっと脈ありかも・・・
私は鼻歌を歌いながら、廊下をスキップした。
亜沙子のおかげで、王子と喫煙女へのモヤモヤした気持ちも消えかけていた。
「恋っていいなぁ!!」
1人で声に出してみた。