「今日は、お二人にお話ししたいことがあって訪ねさせて頂きました。突然のご無礼お許しください」
会釈程度に頭を下げた先輩につられて、慌てて私も頭を下げる。
膝に置いていた手をぎゅっと握りしめれば、その上からふわりと先輩の手が重なった。
「僕は、まだまだ未熟で大学も出たばかりで、正直今は莉乃さんに迷惑かけてしまうかもしれません。……けれどもこの先、絶対に莉乃さんを今以上に幸せに、大切にします。それだけは絶対に誓います。なので、どうか莉乃さんを僕に貰えないでしょうか」
「お願いします」と隣で深く頭を下げる先輩に、じんわりと涙がにじむ。
先輩は、こんな風に考えてくれてたんだ。
頭を下げた先輩に対して、何にも言わないお父さん。
しばらく頭を下げ続けていた先輩に「顔を上げなさい」と初めてお父さんが口を開いた。