自分の実家へと帰るだけなのに、いつもよりもしっかりとした服を身にまとっている。


繋がれた手も、いつも以上に汗ばんでて何度か離そうとしたけれど、力強く握る先輩によって叶わない。




どきどきと心臓を高鳴らせながらインターホンを押せば「はーい」と今までずっと聞いてきたお母さんの声が返ってきた。




「あ、あの、私!」


「あらっ、どうしたの?……何かあったの?」


心配そうに聞いてきたお母さんは、パタパタと家の中で音を立てながら玄関の扉をあける。


そして、私の後ろにいた先輩を見て、何かを悟ったかのように微笑んだ。