生ぬるい風が、草を揺らし、
揺れた草の匂いが、俺らを包む。

「お前らって、何志望?」

「空戦隊、私もルイも。」

「…そっか。」

嫌だ何て言えない。死なせたくない。なんて、言えない。
そんなこと言ったら、俺は自分勝手になる。

「明日から、三年、死ぬ奴も出てくると思う。」

「レオは、私が守るよ。」

見えない表情のミナトが、俺の頭をポンッと撫でた。

巻いていたバンダナを外し、腰のベルトに縛り付ける。

「約束。ぜってえ死なない。」

へへっと笑い飛ばす。
死なない。

絶対に死なない。

甘くない事は、わかってるんだ。

ブレスレットをつけた片手を空に翳し、目を閉じる。

( 父ちゃん、母ちゃん、見てろよ。 )

「俺らの代が絶対に、スプリットを全滅させる。」

心に強く決心し、
ミナトとルイを強く抱き締める。

「レオッ?」

「お前らの事も、死なせない…ッ。」

ぎゅうっと死ぬほど力を込めて抱き締めた。



月が綺麗だ。

曇らせたくないこの世界。

本気で包み込みたいと思った。

月光で、この世界を。