「……」

声もまともに出せない俺に話しかける。

ゆっくり横を振り向く。
無表情のままただ先を見るミナト。

「人の群れなんか無い。見失った。」

「…え……?」

バッと顔を上げ、辺りを見渡すと、
人や家が火で燃え上がる光景。
確かに、人群れが見当たらない。

「置いて行かれたんじゃないのかな。」

ルイが俺の腕を肩に回し、無理矢理にでも速歩きで歩かせてくれる。
……置いて、かれた?

「ルイ、おじさん達は……?そ、ういや……、ミナトのばあちゃんは無事なの……か?」

そういえばっていう思考が次々に出てくる。
ルイは気の弱い義理のお父さんと2人暮らしだ。
ルイを家から連れ出した時どうしたんだ?
まさかこんな自体になるとは思ってなかったろうし、それに、ミナトのばあちゃんも結構な歳だぞ?

「先に、逃げたんじゃないかな。」

「私のおばあちゃんも無事かは分からない。けど、大丈夫だと信じたい。」

肩で呼吸をする俺には、何故こいつらがこんなに落ち着いた大勢でいられるのかがわからなかった。