「何ですって……。」

血相を変えて黙り込む母ちゃん。
その間にも、家はグラグラと揺れる。

数秒が、すげえ長く感じられた。

「いい?今街の人は避難してると思う。その流れに沿ってレオもついて行きなさい。 母さんはミナトとルイを連れて後を追うわ。レオは男の子だから大丈夫よね?」

ギュウッと俺を抱き締めて、頭を撫でる母ちゃん。
男の子…だから。

「これ、何かあったら、ぎゅっと握って強く想いなさい。絶対に無くしては駄目よ。」

そう言って渡してくれたのは、母ちゃんがいつも大事にしていたブレスレット。
俺の手首にしっかりと縛り付けてくれた。
ブレスレットを縛り付けた俺の腕を引き、外に出る。

街には叫ぶ子供の声や、何かを言い争いながら避難する街の人たち。
荷車を押しながら走る人たち。

グラグラと波打つこの街。
空を見ると、月が隠れて一面雲が覆っていた。