「巧君……」



顔を上げると、私服姿の祥子さんが立っていた。


10年近く千尋と寄り添い、病魔と戦いながら歩いてきた千尋を支え、共に過ごしてきた人。

その祥子さんが、俺を見ている。

俺の表情から全て想像出来るのか、その優しさに満ち足りた笑みを向けてくれた。