「わたし、ね。
スイが初めて気づいてくれたとき……、本当に、嬉しかった」
「ごめん、俺がもっと、もっと気づくの早かったら、シキは」
「ううん。スイは、わたしをたくさんたくさん、助けてくれた」
にっこりとほほ笑んで、シキはそういう。
ぽたり、彼女の頬に涙が、零れ落ちた。それは、まぎれもない、自分の涙。
「───わたしね、汐織って、言うの」
「ぇ」
くすっと力なく、シキが笑う。
俺の頬を流れる涙を細い指で掬いながら、小さく微笑んだ。
「スイは?」
「お、れは、───翡翠」
「いい、名前だね」
声が、震える。