すうっと、風が頬を撫でる。
目の前に広がるのは、赤く染まる夕焼けだった。ずうっとずうっと遠くのほうで沈みかける光が、教室もグラウンドも、屋上さえ染め上げる。
「───ぁ、あ」
シキが、声を漏らした。
「そっか、これを、見せたくて」
涙がにじんでいるのが、分かった。
だって、もう、シキの体はその夕焼けすら透き通るほどに、消えかかっているから。
「───あり、がとう」
「そんなのっ、そんなの、俺のほうが言わなくちゃいけないのにっ」
「ううん、わたし、嬉しかった」
シキを抱え込む。
油断をしたら、今にも消えてしまいそうだった。