俺はゆっくり、彼女から離れる。 ───そして、息を呑んだ。 「こころ、のこり……これが、最後だったの」 シキが、 「やっと、伝えられた」 透けて、透明になっていく。 「ま、だ……!まだ、まだだよ、シキまだ、だめだ」 俺はぐったりとするシキを抱きかかえたまま、非常階段を駆け上る。 もう、あたりは夕焼け色に染まろうとしていた。まだ、まだこんなの、こんなところで、まだ、伝えきれてない。伝えたいことが、たくさんあるのに。