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きっと、俺は空っぽだった。

驚くくらいに、空っぽで、何もなかった。


でも、それでも、彼女だけが俺の、すべてだった。


優しくて、脆くて、儚くて、そして誰よりも───強いそんな彼女は、俺の、すべてだったんだ。


向かう場所は、迷わない。

初めて、彼女に逢った場所。そして、何度も待ち合わせを繰り返した、場所。






「───シキ」




名前を、呼んだ。

初めて呼ぶはずなのに、それはすうっと心の中に溶けて今にも、泣き出してしまいそうだった。


好きだった、ずっと。

幼いころから、ずっと。



シキが、好きだった。