…………これを、書くべきか何度も迷いました。きみは、きっとこんなこと忘れたくて、今の今まで忘れてしまっていて、それがきみを傷つけるとしても。


 最後に、屋上へ行こうってきみは言った。

 わたしの手を引いて───屋上へ。


 階段を上っている最中だった、暗がりでおっかなびっくり足だったきみが、階段を踏み外してしまった。

 わたしは、無意識に、スイの手を掴んだ。そして、引っ張り上げた反動で、わたしの体はすうっと宙を浮いた。そして、死んでしまった。

 
 でもね、わたしはそれでも、幸せだった。

 きみのために、きみがくれたありがとうを返すことができて、わたしは幸せだった。

 
 でも、それはきっとスイを傷つけてしまう。

 スイは、わたしを殺したんだって責めつづけるでしょう。だから、だから夕雨さんは言った。

 お願いだから、スイを忘れてください。と。


 たくさん、悩みました。

 たくさん、考えて、考えて、考えて。