家庭科室は特別棟の2階。移動するのも面倒だし、さむ。
俺はそうやって心の中で愚痴りながら、一歩、一歩と歩き出す。
(何か、思い出せそうだった……のに)
何を、思い出そうとしていたんだろう、俺は。
そう思いながら、一歩と踏み出した、そのとき。
───するり、と俺の腕から何かが落ちる。
何だと思って、視線を下へ向ける。───手紙だった。
そうだ、今朝適当に鞄に放り込んだから、多分挟まっていたんだろう。俺はそれを手に取った。何の変哲もない、何も書かれていない手紙。
「……ぁ、あ」
違う。
白紙じゃなかった。それは、白紙では、なかった。