(逢いたい)
「……誰に」
(逢いたい)
「だから、誰にっ」
(逢いたい)
足が、抜けそうになるくらいに俺は駆け出していた。勝手に進み始める。ぐん、ぐん、ぐんと。誰かを探すみたいに。
当てもない捜索の後、俺は教室に戻った。ドアの入り口前で立っているのは夕雨だった。
「えーっと夕雨さん」
「サボるな」
「……はい」
「次は家庭科よ」
「……はい」
どうやら、授業をサボっていることにご立腹の様子だった。俺はしぶしぶ移動教室の用意をして、押し出されるように教室を出た。
後ろからくすくす笑う凪の声がしたが、まあ、気にしない。