───スイが、逢いに来てくれた。


そう、思ったはずだ。


雨の中、冷たい滴を浴びながら、俺のことを、ずっと待っていてくれて。


待ち合わせの時間すら過ぎて、もうきっと来ないって分かってても、分かりたくなくて、ずっと一人で、泣きながら待っていて。


シキは、きっと泣き虫だけれど……声を荒らげてなく方法も、知らなくて、声を押さえながらずっとずっと泣いて。



偶然通りかかっただけの、俺を見て、彼女はたくさん涙を零していた。

泣き虫な彼女が、たった一人で、ずっと俺が来るのを待っていたんだとしたら。



スイが、忘れないでいてくれた。わたしのことを忘れないで、逢いに来てくれた。


そう、彼女は思ったんだ。


だから、腕を伸ばして、俺が目の前にいることを、本当にいるんだってことを確認しようとして。