〜side高野勇士〜

俺は、如月の話を聞いた。

(こいつに、こんな過去が…)


そう、何回も思った。

全ての過去を話を他人に話しても、こいつは涙を見せなかった。

そのかわり、すごく辛そうにしていた。

「…別に、泣けばいいのに」

俺がそう言うと、如月は笑った。

「別に、泣く気なんかないよ」

「…お前、このことを誰かに言ったの
か?」

如月の言葉に疑問に思った俺は、ストレートに聞いてみた。

「・・・言ってないよ。
言えなかったの。友達に言ったらどう返ってくるのか、聞くのがこわくて」


(だから、こいつはずっと一人で、かかえてきたんだな)


「じゃあ、俺に甘えればいいじゃん」

無意識なのか俺は如月を抱きしめてい
た。


「…ちょっと、やめてよ
別に、泣く気なんかないんだから」

俺から離れようとしている如月をさっきより強く、抱きしめた。


「・・・別にいいじゃん。
お前がそんなに、背負う必要なんてないじゃん。それに、話を聞く限りでは、お前はなにも悪くない。だって、お前はすぐに弟がいなくなったことに気づき、誰よりも先に、弟を探したいいお姉さんじゃん。だから、なにも悪くない」


俺は、そう言いながら如月の頭を撫で
た。


「…ふっ」

しばらくしてから、如月の声は…泣き声が聞こえた。

俺はただ如月の頭を撫でているだけだった。

「ふぇぇぇ、ずっと…苦しかった。母さんにも…ヒッ…私が悪いって言われて…
私がいなければって言われて…ヒッ…ずっと寂しかった…私のいる意味がわからなかった…このままずっと…ヒッ…私は
母さんに嫌われたんだって…ヒッ…思った…ずっと…怖かった…」

泣きながら、如月は自分の想いを俺に言ってくれた。


「大丈夫。だって自分の子が嫌いな親なんていないから、きっと大丈夫だ」

俺は、如月のこんな姿をみて愛おしいと思った。

(あぁ、これが『好き』ってことなんだろうなきっと)

俺は、如月に対しての想いを知った。


数十分かして、如月は泣き止んだ。

「もう、大丈夫か⁇」

如月の方を見ると、目は腫れていた。

「大丈夫だよ。それよりごめんねシャツ濡らしちゃった」


「あぁ、別にいいよ。それより大丈夫なら、戻るか⁈」


そう聞いてみたけど、返事はなかった。

「…どう「…がと」へっ?」


ちょうど、声が重なってしまって、如月の声が聞こえなかった。でもー

「あ…りがと」

次は、しっかりと聞こえた。

「あ…あぁ」

そうして、俺たちは店に戻った。