ささっと入り、一番隅の席に静かに座った。

人は中心に集まっていて、こちらには見向きもしないだろう。

というか、なんであんな大人数が一箇所に集まっているんだろう。

なにか有名なもの、もしくは人がいるのだろうか。


考えを巡らせているとカタン、と音がなりそちらに目を向けた。


「あ、はじめまして。
私、愛奈【Aina】っていうの。
よろしくね。」


ふんわりと内巻きにされた黒髪に、クリクリと瞳。

にっこり上がった口角には綺麗なえくぼができている。

ふむ…なかなか可愛い子。


「はっ、はじめまして…。
夢っです…。
よろしくお願いします…。」


ボソボソと小さな声でそう言えば、愛奈はニコッと微笑んだ。


「夢ちゃんか‼︎
可愛い名前ね。
けどよかったぁ。」


「よかったって?」


「私ね、ここって不良さんばっかだって聞いてたの。
だから不安だったんだけど、夢ちゃんみたいに可愛くて真面目そうな子もいるんだね‼︎
なんか、浮いちゃうかもって思ってたから安心した‼︎」


「わっ、私も、愛奈さんみたいな可愛い人と会えてよかったです…。」


「えへへ、ありがとう。
そうだっ、知ってる?
月光のこと‼︎」


そう言った瞬間、鈍く光る愛奈の瞳。


「月光…?」


もちろん知っているが、知らないふりをしておいた方がここはいいだろう。


「知らないの?
全国No.2の暴走族だよ。
この学校には、そのメンバーたちが通っているの。
ほら、あの集団。
多分あの中心にいるのは佐伯 哉汰【Saeki Kanata】だよ。
月光の幹部なの。」


へぇ、幹部くんがあの中に…。