頭ひとつ分高いヒロを見上げる。


昔のようにギラギラと輝く金髪ではないが、黒く艶やかな髪は同じ輝きを放っている。

きついつり目も、赤黒くはないが強さは変わらない。


一見すればイケメンエリート若社長な彼も、あたしのようにハメを外していたなんて誰が思うか。

まあ、実体は頭いいのに馬鹿なお人好しなんだけど。


「なんでメガネ取るの。」


「んー?
ルナの目が見たくてさ。
てかメガネの下は裸眼でいいのか?
バレる危険性上がるだろ。」


その言葉ににいっと口角を上げる。


「あたしがたかだか全国No.2の族にメガネを取られるとでも?」


あたしの言葉にヒロは肩を竦めた。


「まさか。
俺でさえ、気を緩めてくれなきゃ取れないんだぜ?
あいつらなんか擦りもしねぇよ。」


ヒロの言葉に満足気に頷いた。

あたしがあいつらにメガネを取られる、よもや正体がバレるなんて万が一にもあり得ない。

あるとすれば自分でバラすときだろう。


「…絶対に、無茶するときは言えよ。」


「珍しいね。
無茶するな、じゃないんだ。」


正直にそう言えば困ったように笑って、ナチュラルにあたしを抱き寄せた。


「言ってきくなら何度でも言う。
けど、今のお前は…。」


「聞かないって言いたいんでしょ。
さすが幼馴染み、よくわかってる‼︎」


そう調子よく言えば、ヒロは少し悲しさを溶かした声で『…ああ、そうだな。』と呟いた。

背中に回るヒロの手に力がこもった。

怯えているようなそれに、あたしも同じように手を回す。


しばらくの抱擁のあと、ヒロが名残惜しげに手を外した。


「さあ、そろそろ時間だ。
誰にもお前のことは言っていない。
ルナの要望通り、この学校内では俺たちは赤の他人だ。
だが、少しでもお前の危険を察知したら手を出さざるを得ないからな。」


「わかってる。
その言葉、もう何回も聞いたしね。」