「……さてとっ‼︎
完成〜‼︎」


両手を広げ鏡の前でくるりと回る。

それと同時にふんわりと揺れる長いスカートと真っ黒できっちり三つ編みされた長い髪。

ビン底メガネにキッチリ第一ボタンまで止められたシャツ。



とても自分とは程遠い見た目に一人で爆笑する。


「くっはははは‼︎‼︎
なにこれっ、あたしっ⁉︎⁉︎
あははははっははははっ‼︎」


一人で思い切り笑終わったところで、一息ついた。


「はあ…。
さて…行こうかな。」


小さく行って来ますと言って戸締りをする。


この家を出た瞬間から、演技は始まる。


びくびくとした《私》だ。


それなりに大きな家を後にし、目的地である学校へと歩いていく。


道ゆく人に怯えるフリも忘れずに。


挙動不審な私を、他人がどう見てたかなんて興味はないけど。


ものの10分ほどで着いたそこは最悪な状況だった。


今日は入学式だというのに、既に他校の生徒が乱闘に来ている。


やれやれ、先が思いやられるわ。


内心はそう思いつつも、大人しくオドオドした設定で行くからには怯えたように隅の方を小さくなって通らなくてはいけない。


頭で想像したようにコソコソと道の隅を通ればなんなくその乱闘をくぐり抜けることが出来た。


目の前に広がるのは綺麗な壁と磨かれたガラス。

やっぱり校舎だけ綺麗なのって違和感だな。

近くにあった土間で靴を脱ぎ、手に持ちながら廊下を進んでいく。

どうすればいいんだろう。


とりあえず、あそこ行こうかな。