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「っ…‼︎
ルナっ‼︎‼︎」


いつかのように、奴の声で目を覚ました。

ハルに話しかけながら途中で寝てしまったのだろう。


「…ふぁ…あ。
なんだよ〜…っ‼︎‼︎‼︎
ハル…⁉︎」


擦った目に映ったのは、誰もいない真っ白なベッド。


すぐさま布団の中に手を突っ込むが、既に冷え切っていて、大分前にいなくなったことがわかる。


「どう、いうこと…。」


ぎゅうっと手を痛いくらいに握りしめる。

プツッといった音と共に生暖かい何かが拳を伝うのを感じた。


「っ、ルナ‼︎
手ぇ、緩めろっ…。」


奴がそう言った瞬間、ドタバタと何人もの男が部屋に入ってきた。


「ルナ嬢っ‼︎
ハル嬢がいなくなったって…っ‼︎‼︎‼︎」


息を詰まらせた男どもに目もくれず、あたしはただ白いシーツを睨んでいた。


そっと、まるで彼女に触れるように優しく撫でるが、当たり前のようにあの温かさも笑顔もない。


「なんでっ…‼︎」


力任せにベットを殴り怒りを露わにする。


「っ…‼︎」


辛くて痛くて呼吸もしたくないくらいなのに、涙は一切で無い。

ハルが自分の意思でいなくなったなんて思いたくない。

きっと誰かが…。


「…探せ…。」


誰かがハルを連れ去った。

そう考えると頭に上っていた血が正常に流れ出すのがわかった。


「っおい…!」


あたしの表情は、よっぽど歪んで見えるのだろうか。

制止しようとしてる声が確かに鼓膜に刺激を与えるけど、脳に届くことはない。


「探せっ‼︎‼︎」


その号令と共に多くの足音が病室からドタバタと出て行く。


「…ルナ…落ち着いてくれ、頼むから。」


「…何いってんの。
これが…落ち着いていられる⁉︎」


そいつの声はまるで逆毛を立てる猫を宥めるときのよう。

それがいつもなら落ち着くのに、とてもそんな気にはならない。

それどころか気に障って、今までないくらい強く睨みつけた。

一瞬驚いたように目を開いたけど、すぐに真剣な表情になる。


「…聞け。
俺たちはハルがいない今、お前しか頼りにできないんだ。」


「……あんたがいるじゃない。」


「トップはてめえだろーが‼︎」


珍しく、本気で声を荒げたそいつに肩が自然と上がる。

そんなあたしを見てはあぁ…と深く息をついてから、両肩に手を置き真っ正面から見つめる。


「…誰も、ずっと傍にいた俺でさえ、お前の代わりなんかできねえ。
せいぜい真似事が限界だ。
お前がいなきゃ、今の俺たちはボロボロに崩れ落ちる。」


…大切な、彼らが傷つく光景を想像して瞳が揺らいだのがわかる。


「別にハルを探すな、なんて言いやしねえよ。
けどな、もうちょい周りも見てくれ。
お前は一人じゃねえんだから、冷静に次の手を考えろ。
がむしゃらじゃあ、身がもたねえだろーが。」