―――……

――――――…………


「…な、…ルナ!!」


「はっ…!!」


あたしを呼ぶ声に目を覚ませば、いつも通りのハルとあたしの部屋の天井と傷だらけでいつになく優しい笑顔で笑うヤツ。


「はよ。
今な、ハルの手術終わったから。」


「っはる…っつ!!」



コイツの言葉に、咄嗟にハルのもとへ向かおうと立ち上がったが、身体中が傷んで思わず崩れ落ちる。

それを支えながら、呆れたようにため息をつくコイツ。


「はあ…落ち着け。
ハルも無事だ。
まだ寝てる。」


再びベッドへとあたしを寝かせ、自分は床にあぐらをかいた。


「…その傷、どうしたの?」


ぎくっとしたように肩をあげ、誤魔化そうと口を開いたようだけど、ごめん。

本当は気づいてるの。


「あたし、だね。
……ごめん。」


「…お前は悪くねぇよ。
簡単にやられた俺らのせいだ。」


「っ、ううん、ごめん…!!
あたし、またハルしか見えなくなって…!!」


「気にすんな、今に始まったことじゃねえ。
今日はもう寝ろ。
明日、ハルの病院行くからな。」


「うん…。」


目を瞑るけど、一向に出て行く気配はない。


「…出てかないの?」


「あ?
出てったらお前、脱走して病院まで行きそうだからな。
見張りだ。」


「うっ…。」


「やっぱり考えてたのか。」


図星で呻き声を上げれば、呆れながらも面白そうに口角をあげる。


「おら、さっさと寝ろ。
俺様だって寝てぇんだよ。」


「…ん…。」


瞼を無理やり下げるコイツに仕方なく従って、睡眠へと意識を向ける。


思ったよりも楽に寝れたのは、認めたくないがコイツのおかげだろう。




翌日、あたしは早朝に病院を訪ねた。

急いた足取りでハルの病室に飛び込めば、いまだ瞳を閉じたままのハルが真っ白なベッドに横たわっていた。

近づいて手を握れば、暖かくて安心した。


「ハル…ただいま。
ごめんね、昨日…一緒にいられなかった。」


ハルはもちろん寝息をたてていて聞いているはずがないけれど、あたしは話し続けた。


「昨日、デートだったのに…ごめんね。
もしかして昨日抗争だって知っていたの?」


話し続けるあたしを一人残して、奴は病室を出た。

ドアが閉まると同時に、白いシーツに雫が音を立てて落ちた。


「ごめんね…ごめん。
守れなくて、ごめんなさい…。
次はこんなことにならないから…!!
あたしが守るから…!!」